【2022年版】アパレルECの市場規模、トレンド、課題を解説

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アパレルECの市場規模とEC化率

国内アパレル市場とアパレルEC市場規模の推移

アパレルECの市場規模とEC化率を見る前に、国内のアパレル全体の市場規模状況をお伝えします。国内アパレル供給量は増加傾向にある一方で、国内市場は衰退の一途を辿っています。少子高齢化や経済悪化などさまざまな影響により、我が国のアパレル市場の未来は決して明るいとは言えない状況なのです。

アパレル業界の売上最大手のファーストリテイリングでも、ユニクロの海外事業を強化しています。2021年1月現在、売上高や店舗数はともに、海外が国内を上回っており、中国を中心に東アジア、東南アジア、米国、欧州などに展開するなど、今後ますます海外比率が高まっていくことが予想されます。

▼国内アパレル供給量・市場規模の推移

引用:繊維産業の現状と経済産業省の取組|経済産業省

アパレル全体の市場規模が衰退している一方で、ECにおけるアパレル産業は堅調に成長しています。2020年(令和2年)のECでの衣類服装雑貨等の市場規模は1.9兆円から2.2兆円へ成長。EC化率は、前年から6ポイント上昇し、19.44%となりました。EC化率とは、消費者の全ての購買のうちEC(電子商取引)で決済された割合を指します。シンプルに言えば、ショッピングの約2割がオンラインで行われているという状況です。2015年時点でわずか9%程度だったことを考えると、6年間で2倍以上の割合になったことになります。ネットで服を買うことが当たり前の時代になってきたと言えるのではないでしょうか。

▼産業別のEC化率(2020年度)

引用:令和2年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

▼衣類・服飾雑貨等のEC化率推移

年度 市場規模 EC化率
2015年 1.38兆円 9.04%
2016年 1.52兆円 10.93%
2017年 1.64兆円 11.54%
2018年 1.77兆円 12.96%
2019年 1.91兆円 13.87%
2020年 2.22兆円 19.44%

引用:令和2年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

なぜアパレル分野はEC市場規模が拡大しているのか

なぜアパレル業界全体の国内市場が衰退している一方で、ECの市場規模は拡大しているのでしょうか?広い視野で見ると、大きな要因はリアルの小売店舗減少に伴うデジタル化の推進にあると言えます。
地域の商店だけでなく大手百貨店でも閉店や撤退が相次ぐ昨今。設備投資や人件費コストが抑えられるECに企業がシフトする流れはもはや避けられません。ファーストリテイリングの国内店舗数も直近5年間は減少傾向。海外系ファストファッションも低迷を続け、2019年には「フォーエバー21」「アメリカンイーグル」などが国内から撤退をしています。

一方で、2021年にはデジタル庁が発足するなど、国家レベルでデジタル・トランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいます。ITリテラシーが高くない企業でも手軽にECサイトを構築できるようにもなりました。
メーカーやブランドでは、楽天やAmazonなどのECモールを通さずに、自社のウェブサイトを通じた消費者への直接販売も拡大しています。

さらに、OMO(Online mergs with offline)と呼ばれる、オンライン(EC)とオフライン(実店舗)の垣根を超えたビジネスモデルが普及したこともEC化率の向上に繋がりました。
OMOを通じて、実店舗とオンラインストアの顧客データを連携させ、実店舗の購買データを元にECで商品提案を行うことなども可能になります。消費者としても、オンラインで購入した服を実店舗で受け取ったり、店舗で試着をした後にオンラインで決済したりと、ライフスタイルに合わせたショッピングができるようになりました。

その他にも、DXの推進が消費者にとってさまざまな恩恵をもたらしています。その1つが「試着」です。かつては衣服やアクセサリーは現物に触れて質感やフィット感を確認できないことが大きな課題でした。しかし近年では、バーチャル試着サービスなどが登場し、実店舗に足を運ばなくとも購入者の体型に合わせたオンライン試着が可能になっています。ユナイテッドアローズやマルイなど大手アパレルブランド・百貨店も導入しており、今後ますます普及することが予想されます。

2020年にアパレルのEC化率が急拡大した最大の要因は、新型コロナの影響と言えるでしょう。2020年以降、全国で複数回にわたり発令された緊急事態宣言で、外出自粛を余儀なくされました。その結果、消費者はネットショップで衣類を買わざるを得ない状況に直面し、その慣習が次第に定着していきました。コロナ収束後もEC利用率は大きく下がることなく、実店舗とECを併用するショッピングのあり方がより一層一般化していくと予想されます。その他にも、フリマアプリ(リユース)や、衣類のレンタル(シェアリングエコノミー)の利用拡大も影響しているでしょう。

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アパレルECサイトの種類と特徴

さて、「EC」と言ってもさまざまな種類があります。ここからはアパレルECサイトの5つの種類と特徴をご紹介していきます。

▼アパレルEC5つの種類

モール型EC ブランド・メーカー直販(D2C) 自社ブランド販売 フリマアプリ(リユース) シェアリングエコノミー
代表例 楽天
Amazon
Yahoo!ショッピング
ZOZO
大手企業、ハイブランドの公式ショップ 個人~中小ブランド メルカリ
ラクマ
エアークローゼット
メチャカリ
ビジネスモデル BtoC BtoC BtoC CtoC BtoC
実店舗との連携 ×
成長速度
スケール

モール型EC

多種多様なブランドが1つのECサイトに集結したショッピングモール型ECのことを指します。楽天やAmazonのように、さまざまなジャンルを扱う総合型モールと、ZOZOTOWNのようにアパレルに特化したモールがあります。
大手モールでは月間で1,000万人以上のアクティブユーザーが利用しており、知名度の高いブランドであれば売上を伸ばすことに多くの時間は必要ないでしょう。一方で、ECサイト内にブランド・メーカーが出店する形式をとるため、消費者とダイレクトなコミュニケーションが取りづらい、モール側の規約や仕様がネックで自由自在にサイトをカスタマイズができない、といったデメリットがあります。

中堅〜大手のブランド・メーカーにとってECモールは小売店と同じ位置付けであり、1つの販路として利用しています。それに対して、個人事業主や中小のオリジナルブランドにとっては、「モールでの成功=ビジネスの成功」と捉えるほど、モール売上が会社の発展や存続に大きな影響を与えます。そのため、ECモールへ売上が依存してしまい、自社ECサイトがなかなか上手くいかないケースもあります。モール利用手数料や広告費などがかかるため、薄利多売のアパレルブランドにとっては、利益を出しにくい構造になっているのも事実です。

ブランド・メーカー直販(D2C)

自社がメーカーとしてオリジナルブランドを持ち、商品を直接顧客に販売するビジネスモデルです。近年、グローバル規模で急拡大しています。SNSなどを通じて、消費者に直接ブランドを訴求でき、顧客と最も近い距離でコミュニケーションが取れるやり方です。メーカーやブランドはかつて、小売店や代理店を介さないと販売やマーケティングができないのが一般的でした。顧客と直接コミュニケーションできるようになることで、マーケティングや商品開発にも大きな影響を与えています。大手・中堅ブランドのD2C参入はますますスタンダードになっていくでしょう。消費者は同じ商品でも「どこのお店で買うのか、誰から買うのか」を選ぶ時代になってきています。

自社ブランド販売

個人事業主や中小企業が自社ブランドでアパレルECを展開するケースが増えています。インスタグラマーやYouTuber、ライバーといったインフルエンサーがファン向けにオリジナルブランドの商品を販売できます。OEMを活用すれば、莫大な開発コストや在庫を抱えずに自社ブランドをはじめることもできます。ECサイト構築においても、BASEやメルカリショップなど低価格のASPやクラウドサービスが登場し、ローリスクでECサイトを立ち上げることができるようにもなりました。一方で、集客、受注・在庫管理、配送をすべて自社で行う必要があり、サイト立ち上げ直後の安定稼働、リピーターやファンづくりの難易度は高いと言えるでしょう。立ち上げスピードや費用だけを考えた場合にはおすすめですが、ECサイトをスケールさせるには時間と労力がかかります。

フリマアプリ

消費者間で取引をするモデルのECの代表例としてはフリマアプリのメルカリ、ヤフオクなどです。2021年は2兆円を超える市場に成長が見込まれています。CtoCプラットフォームを利用すれば、販売者はサイト構築や初期設定ほぼ不要で、ECをはじめられます。販売した商品ごとに手数料を支払う必要があり、商品ごとに在庫を縦積みしづらいというデメリットがありますが、EC初心者でも短期的に売上をつくりやすく、自社サイトやECモールよりも導入ハードルが低いと言えます。
フリマアプリは10-20代の若年層も多く利用している点が他ECとの違いです。事業者(店舗)として出店する事も可能で、ECサイト立ち上げ前のテストマーケティングの場として利用するのも1つの選択肢でしょう。

シェアリングエコノミー

エアークローゼットやメチャカリなどの衣服のレンタルサービスも少しずつ社会に浸透してきています。月額課金のサブスクモデルで、スタイリストが選んだ服が定期的に自宅に届きます。エアークローゼットのユーザーはファッション流行に敏感な層が大半を占めています。月額2980円〜の定額で洋服が借り放題のメチャカリも同様です。
どちらのサービスもバイヤーがブランドから衣服を仕入れて消費者にレンタル。クリーニングやメンテナンスはプラットフォーマー側で行うため、消費者は手軽にレンタルでき、返す手間もかかりません。ブランドとしても、新作をPRしてもらえるチャンスでもあります。消費者とブランド双方でアパレル廃棄問題を解決するための1つの手段として、今後利用者が増えていくのではないでしょうか。

アパレルECの売上高ランキング

アパレルECサイトの種類と特徴の次に、2021年 最新のアパレルEC売上高ランキングを紹介します。実際にどのブランドがいくら売れているのか、EC化率はどうなのか、どんな取り組みを行っているか気になる方にご覧いただければ幸いです。

▼2021年ファッションEC売上高ランキング TOP5

企業名 売上高(億円) 前年比(%) 主要ブランド
1 ユニクロ 1269 17.9 ユニクロ
2 ベイクルーズ 545 6.9 JOURNAL STANDARD
3 アダストリア 538 23.4 GLOBAL WORK
4 オンワードホールディングス 415 26.0 23区
5 TSIホールディングス 406 12.0 ナノ・ユニバース

出典:【2021年版】ファッションEC売上高ランキングTOP50|日本ネット経済新聞

1. ユニクロ

公式ECサイト:ユニクロ公式オンラインストア

アパレルECの第1位は、2位以下と大きな差をつけてユニクロとなりました。ファーストリテリング社が展開するユニクロブランドは、老若男女、人種国籍を問わず幅広いターゲットに「あらゆる人の生活を、より豊かにするための服」として「LifeWear」というコンセプトを打ち出しています。
ユニクロでは、企画・計画・生産・物流・販売までのプロセスを一貫して行うビジネスモデルで独自商品を開発する仕組みを構築。近年ではオリジナルブランドのUniqlo U、+J、Theoryとのコラボレーションなどが大ヒットし、かつてのファストファッションのイメージからの脱却に成功しています。
オンライン注文・店舗受け取りも早期から開始しており、ECでの売上比率は2020年8月期で約15%に達しています。日本では約13%ですが、中国では約20%、北米では約40%となっています。今後は、店舗とEコマースが融合したサービスをさらに拡大していくようです。

2. ベイクルーズ

公式ECサイト:ベイクルーズストア

ベイクルーズの主要ブランドであるJOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)はアメカジテイストの商品を取り揃えるセレクトショップ。20代〜30代後半をターゲットにしています。他にもジョイントワークス(JOINT WORKS)、イエナ(IÉNA)など約50のファッションブランドと、飲食や家具の事業も手がけています。

ベイクルーズのEC売上比率は2020年8月期で約40%、EC売上高は過去5年で3倍以上に拡大。ECモールに依存せず、自社サイトの売上が全体の70%以上を占めています。ECサイトの成長要因として、開発・運営を外注せずに、徹底して内製化している点にあるようです。

3. アダストリア

公式サイト:.st(ドットエスティ)

「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」などのブランドを展開するアダストリア。売上最上位の「グローバルワーク」は20~30代の男女、2~15歳の子供をターゲットにしたブランドです。
2022年2月期の国内EC売上高は9か月累計で421億円、前期比108.1%と力強く成長を継続しています。1300万人以上の会員を有する自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」にてアダストリアのブランドをまとめて買い物することができます。
「.st(ドットエスティ)」には、2018年から「STAFF BOARD」という店舗スタッフがスタイリング写真を投稿するコンテンツを開始。コロナ禍で店舗にて試着ができなくても、商品のイメージや使用感を消費者に届け、売上アップに繋がっているようです。

4. オンワードホールディングス

公式ECサイト:オンワードクローゼット

オンワード樫山が運営する23区、自由区、組曲などの主要ブランドは20代半ば〜30代女性がターゲットです。近年ではアンクレイブなどEC限定ブランドも人気です。
2021年4月にはOMO型店舗の「ONWARD CROSSET STORE」「ONWARD CROSSET SELECT」を出店。自社のアパレルや雑貨以外にも、コスメやインテリア雑貨など、ブランドの垣根を越えて、実店舗とオンラインを融合させています。ECサイト上の商品を取り寄せて試着・購入できる「クリック&トライ」や「リペア&メンテナンス」など新しい顧客体験にもチャレンジしています。

5. TSIホールディングス

公式サイト:Mix.Tokyo

レディース、メンズ、ゴルフ、ストリートなどの幅広いブランドを展開しているアパレルメーカーで、2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合して設立。30個の自社ECサイトとTSIブランドを集めたECモール「Mix.Tokyo」を運営しています。主力ブランドとしては「ナノ・ユニバース」「ナチュラルビューティーベーシック」があります。2022年2月期第1四半期の連結決算では海外ECが好調で、前年同期比約4.5倍に成長。国内外合わせたEC化率は35.3%と、高い比率を保っています。スタッフコーディネート投稿とオンライン接客を強化して売上アップに繋げています。

コロナ禍におけるアパレルECのトレンド

ここまでアパレルECの売上上位のブランドを見てきましたが、アパレルEC全体としてコロナ禍でどう変化したのか、押さえておくべきトレンドをお伝えしていきたいと思います。

コロナ禍で消費者、事業者の意識はどう変化したか?

新型コロナウイルスの感染拡大やウィズコロナの生活を通じて、消費者の意識はどのように変化したのでしょうか。
第一に、消費者のオンラインでのショッピング機会が増えたことは間違いありません。
外出自粛期間中は実店舗に足を運べず、休業するメーカーも多くありました。事業者としても、需要の高いECへシフトするように方針転換をし、結果的にECで大きく売上アップしたブランドもあります。

第二に、どのようなお店でどのような商品を買いたいか、消費者の意識は変化しているようです。ある調査では「コロナ影響で打撃を受けた事業者の商品・サービスを買いたい・買うようにしている」とする人が60%、「自分さえよければいいという消費行動はとりたくない」と回答した人が80%という結果が出ています。
利他主義的消費行動をすることで、幸福度を高く感じる消費者が増えているということが見て取れます。

①サステナブルファッション

アパレル業界は長い間、ファストファッションの流行とともに大量生産・大量廃棄を繰り返してきました。世界的な感染症のパンデミックをきっかけに、持続可能な社会実現に貢献したい、そのためにも良いものを長く着たい、そのように思う消費者が増加しているのではないでしょうか。

実際に、2021年に伊藤忠商事やゴールドウイン、日本環境設計、ユナイテッドアローズなど11社が共同で、持続可能なファッション産業への移行を推進することを目的とした「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」を発足。製造工程におけるCO2削減、工場での労働環境の不透明性の是正、大量廃棄問題を解決するための活動、政策提言などを行っています。

ZARAやH&Mの店舗でも古着回収プログラムを推進しており、リユース素材を使った衣類も販売されています。いいものを長く着るという考え方に加えて、環境に配慮した服をできるだけ選ぶという考え方も強まっています。

②オンライン接客の強化

コロナ禍で外出自粛期間が長くなり、オンラインショッピングを利用するユーザーが増加しました。このトレンドに合わせて、アパレルECではオンライン接客を強化する企業が増加しました。オンラインで自分の体型に服を合わせられるバーチャル試着や、ショップスタッフやコーディネーターと購入前にチャット相談ができる機能、EC上でも商品を鮮明にイメージできるような商品写真、サイズ・カラー説明などユーザーにとって使いやすいECサイトの体験を提供しています。
電話やメール問い合わせだけでなく、AIを活用した自動会話プログラム、有人チャット(コンシェルジュ)、ビデオ通話などを使った多角的な接客が主流になりつつあります。一方で、オペレーターの人材にも限りがあることから、インスタグラマーやYouTuberを起用し、動画やライブ配信で商品の訴求を行っているブランドも増えています。

③ライブコマース

ライブコマースとは、中国から広まったライブ配信とイーコマースを組み合わせた販売手法です。アパレル運営会社がライバーやインフルエンサーとコラボレーションして商品のPRを行うケースなどで利用されています。
中国ではインターネット人口の半数以上が、ライブコマースでの購入経験があると言われており、短期間で売上をブーストする手段として一般的になっています。
中国でライブコマースが定着した理由は、粗悪品や並行輸入品などが多く流通しており、信頼できる人物から現物の特徴や使い方を聴きたい、自分の目で確かめてから購入したい、といったニーズが強いことが考えられます。日本でもコロナ影響をきっかけにライブコマースが再注目され、大手アパレルブランドを中心にライブコマースでの販売を開始しました。外出自粛や店舗休業など、ライブコマースを使う理由が整ったことで、日本でも少しずつ定着の兆しを見せています。

視聴者は配信者にリアルタイムで質問ができるだけでなく、ライブ配信中の一体感や特別感、双方向のコミュニケーションが楽しめます。特に衣服やアクセサリーは、画像やテキストだけでは伝わりにくい商品の細部や、生産者の想いなどを知ることができ、相性がいいジャンルでしょう。
動画配信のためネットワークの遅延の問題はあるものの、今後5Gネットワークの普及により大容量データの配信も進み、ビジネス利用がますます増えることが予想されます。

アパレルECの課題

ここまでで、アパレルECのトレンドを説明してきました。アフターコロナと言われるような時代においてもアパレルECはさらに成長を加速させるのでしょうか?
現実的には、アパレル分野のEC化率が2020年現在で20%未満ですので、まだまだ実店舗の需要が大きいことがわかります。一方で、メーカー・ブランドのEC参入のハードルが下がっており、プライベートブランドの生き残りはますます厳しくなっていくでしょう。
ここからは、アパレルECの直面する課題を解説していきます。

そもそも小売店の数が多い

日英米の3ヵ国で、「人口あたりの小売店舗数」を比較すると、日本は突出して多くなっています。つまり、自宅の近くにショッピングモールや百貨店などがあり、アクセスが良いのでわざわざECで購入する必然性がないということです。しかし、昨今のコロナ影響を見ると、その定説も覆されていくのかもしれません。実店舗を展開できない中小事業者は、リアル店舗では購入できないオリジナル商品(独自化)や、実店舗よりも低価格で良質なデザイン(差別化)を実現していくことが求められます。

実店舗とオンラインストアの壁

アパレルECの永遠の課題が、「いかに実店舗(リアル)と同じ品質を提供できるか」です。消費者の多くは、実店舗で受けられるサービスをECにも求めてしまいます。商品を手に取って比較、試着、ショップスタッフへの相談、返品対応、即日受取などは、いまもECでは十分に実現できていません。

第一に、商品サイズ・カラー・素材を、購入者の期待値にいかに近づけるかが鍵となります。日本ではECでの購入後の返品が浸透しておらず、「自分の体型に合わなかったらどうしよう」という心理が働いてしまいがちです。この不安を解消するために、大手メーカーでは実店舗とオンラインを融合したOMO型店舗の出店が加速しています。
ZOZOではZOZOスーツを開発し、購入者の全身のサイズを寸法しパーソナルデータ化。ユーザーの体型に合わせたファッションの提案や、サイズのミスマッチが起きないような取り組みを行っています。
こうした施策に対抗するためにも、資金が潤沢でない中堅中小メーカーは、地道なファンづくりやおもてなし対応など、大手にはできない対策が求められるでしょう。

返品できない

ECでは購入後に返品ができない、しづらいという課題があります。リアル店舗で購入した商品は、領収書と引き換えに、返品・交換ができる場合が多いと思います。一方、国内のECサイトにおいては返品・交換は受け付けているものの、購入者都合での返品は許可されていないケースがあり、返品できても送料が自己負担になるケースが多い状況です。日本のEC返品率が5〜10%であることに対して、アメリカの返品率は20〜30%と言われています。その中でも返品がもっとも多いカテゴリーがアパレルです。とある調査では、返品理由は「商品破損」がもっとも多く、「ウェブサイトの説明やイメージとの乖離」がそれに次いでいます。
NIKEの公式オンラインストアでは、購入者が1回に限り「サイズやカラーの返品ができるサービス」を提供しています。アメリカのECでは返品無料を謳っている事業者も多く、それゆえEC化が進んだ背景があると言われています。しかし、返品コストは事業者の悩みの種であることは間違いなく、日本のアパレルECでも返品に対する姿勢が問われるところです。
消費者のイメージのミスマッチが起こりにくく、それゆえ返品も発生しづらくなる仕組みを考えるべきでしょう。

ブランディングと集客

自社ECの場合、モールECと比較して集客が最も課題になる傾向にあります。モールECはすでに大規模な会員を抱え、圧倒的に多くのトラフィックを集めているためです。知名度の低いプライベートブランドを展開するECサイトの場合、モールECでは出会えない商品や得ることのできない体験を提供する必要があります。数多くのオンラインストアから見つけてもらうために、自社ならではのサービスや顧客接点を設計し、ブランディングを強化していかないと勝ち残れません。そのため、ZOZOTOWNや楽天のようなモール型ECに出店しながらも、地道に自社ECサイトを育成していくことが重要ではないでしょうか。

在庫の一元管理

自社ECサイトとモールECの両方を展開する場合、在庫の一元管理が課題になります。モール販売の商品在庫は、モール側の倉庫へ入れるケースがあります。一方で、自社サイトは自社の倉庫で在庫管理をする場合も多く、在庫管理が一元化できません。この場合、自社サイトで品切れの商品が、モールでは販売されている状況が発生します。メーカーとしては利益率の高い自社サイトで購入してほしいのですが、販売機会を損失することになりかねません。そのため、AmazonのFBAや楽天のRSLのように、全商品在庫をモール側の物流センターに集約し、物流業務をアウトソーシングする流れも強くなっています。かつて非常に高額な固定費がかかっていましたが、現在では物流網の整備が進み、中小ブランドでも利用しやすい価格帯になってきています。

IT人材の不足

アパレルECにおいて、事業のスピードアップを図るため、デジタルマーケティングやシステムの開発・運用を内製化できるとベストです。しかし多くの企業でIT人材が不足しており、外部ベンダーに丸投げしてしまうケースも少なくありません。社内のDXが進まないことで起こるデメリットとしては、顧客ニーズをサービスに反映するのが遅れてしまうこと、競合他社にスピード感で負けてしまうこと、採用ブランディングが難しくなること、などが挙げられます。プロデューサー、マーケター、エンジニア、デザイナーなどのクリエイティブ職を採用できないと、事業の衰退のリスクもあるでしょう。近年では。副業人材やフリーランス、社外顧問などさまざまな雇用形態でスペシャリストを採用できるため、正社員採用に捉われずに優秀な人材を囲い込めるメーカーが生き残る時代と言えるのではないでしょうか。

まとめ

この記事では、これからアパレルECを始められる方向けに、EC市場規模、トレンド、課題を解説してきました。アパレルECの基礎的な内容は掴んでいただけたのではないでしょうか。

実際にECサイトを制作する場合にどのECシステムを選べばよいか、お困りの方も多いかと思います。アパレルの場合、ブランドの世界観や自社ならではのサービス、顧客コミュニケーションが重要であるため、サイトのデザインやカスタマイズが柔軟にできるシステムで、より強みを発揮できる可能性があると考えます。

EC-CUBEは、デザイン、機能、店舗との連携等の柔軟性の高さから、アパレルECでの導入事例が豊富です。ウェブサイトから400件以上の構築事例が参照できますので、是非ご覧いただき、自社が理想としているサイトを思い描いてみてください。

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この記事を書いた人

株式会社イーシーキューブ

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